苦あれば楽あり ‘’リボーン・タウン“の起死回生

バブル経済の影響で栄枯盛衰を経験した街や施設、企業は数多い。新しい時代の追い風をうまく捉え、見事に復活した熱海や湯沢町も、空いていることを逆手にアピールする志摩スペイン村も、発想・視点の大きな転換点があったはずだ。

■熱海復活のカギは個人客対応

 バブル期を挟んだ栄枯盛衰の代表格が熱海だ。バブル崩壊以降、衰退の一途をたどってきた熱海が、近年、街並みやホテルの再開発などによって見事復活を遂げつつある。バブル期の1991年約440万人だった市内宿泊者数は、2011年には約246万人と半減したが、2017年には307万人と緩やかに回復している。往時の団体客仕様から個人旅行者対応をハード/ソフト両面で行ってきたのが功奏、インバウンド客や中高年層はもちろん、特に若者の増加が顕著だという。

■スキー文化象徴の湯沢が移住の街へ

 スキーブームに沸き、“東京都湯沢町”とも言われた新潟県湯沢町も栄枯盛衰を経験したエリアだ。「ガーラ湯沢」のオープン直後の1992年には年間820万人のスキー客が押し寄せたが、バブルの崩壊とともにスキー客は年々減少、2010年には210万人とピーク時の4分の1ほど。湯沢町がV字回復した理由は、外国人観光客と移住者。アクセスの良さから外国人客は増え続けている。湯沢町に次々と建設されたリゾートマンション群も今や空き室と老朽化で、最安値10万円ほどで購入できる物件も。その安さと周辺環境の良さで、県外からの移住者が急増、現在では人口の1 割以上がリゾートマンション住まいだ。また、除雪の必要もないことから町民が移り住むケースも増えているという。

■逆境を逆手に取る発想転換

 少し毛色の変わったテーマパークの甦りもある。三重県の複合リゾート施設「志摩スペイン村」は、テーマパーク「パルケエスパーニャ」が空いていることを逆手に取ったプロモーションで話題になっている。2019年2月からの「25thアニバーサリー」で、「正直、スキスキ!」「混雑していないからこそ他施設より2000%遊び放題楽しめる」として、「並ばないから乗り放題」、「空いているから映え放題」、「ライバルが少ないから目立ち放題」、「(キャラクターと)距離も近いから仲良し放題」の4つの魅力をアピー-ル、集客を図っている。 

 時代や社会の動向、生活者ニーズの変化が衰退した街や施設の復活を後押ししていることは間違いないが、それ以上に、地元行政や住民、施設運営者の思い切った発想転換や投資、努力が実を結んでいるに違いない。

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編集工房《Office K》が提供する、Marketing/Mind/Movementのイマとコレカラを読み解くトレンド・クリップ。時代・社会、市場・商品、暮らしや生活意識の大小潮流をご紹介。