AIによって社会課題を解決する ‘’ダイナミックプライシング“

すでに航空業界やテーマパークなどでお馴染みの「変動料金制」。スマホ予約やAI活用などが一般化するにつれ、毎日の暮らしのすぐそばへと浸透しつつある。需給による価格変動は消費者だけでなく働く現場にも大きな変化を生んでいる。

■スーパーの食品ロス対策に

 食品ロス解決の方策として、大手スーパーの食品売り場にダイナミックプライシング導入の動きが目立つ。イオンリテールは2021年7月から、AIを使って適切な価格を決める「AIカカク」システムをイオンスタイル全店舗に導入した。これまで割引率は店員の経験で決められていたわけだが、総菜の在庫数に応じてAIが割引率を細かく変ええることで、閉店時までの売り切り率をアップさせているという。

■自販機でも価格変動

 店舗だけでなく自販機でもダイナミックプライシングが活用されている。サラダを販売する自販機「SALAD STAND」(KOMPEITO社)は、AIセンサーが周辺の通行者数や購入者の年齢や性別などの情報を収集する。それらデータをAIが分析、1時間ごとに価格を変動させる。最初の設定価格は全て980円だが、残り個数や消費期限などとも併せ、価格の引き下げを自動で行うというもの。

■美容院の働き方改革に貢献

 ある美容院では時期や曜日、時間帯などで異なる(通常より2~3割ほど抑えた)料金を設定、土日やお昼前後に集中しがちな予約の分散化に成功している。単なる需給の調整という効能だけにとどまらず、従業員の働き方の自由度をも高めたという。結果として、美容業界でも深刻な離職率の高さや慢性的な人手不足の解消につながる取り組みとなった。ダイナミックプライシングは、消費行動をコントロールできるだけでなく、雇用の確保や働き方改革、ひいては経営の安定化にもつながる社会課題ソリューション策ともなるわけだ。

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編集工房《Office K》が提供する、Marketing/Mind/Movementのイマとコレカラを読み解くトレンド・クリップ。時代・社会、市場・商品、暮らしや生活意識の大小潮流をご紹介。