アナログ感覚は捨てられない “ ハイブリッドDX “な体験価値

猫も杓子もDXだ、AIだと騒がしいが、エンタメとしての消費体験には、アナログチックな感覚や演出は不可欠なものだ。本を選ぶのもお寿司を注文するのも、液晶パネルでワンタッチ完了では味気ないし楽しくない・・・だって人間だもの。

■進展するDX社会

 政府の推進する重点施策の一つでもあり、新規事業開発や人手不足への対応に欠かせないDXだが、DXに取り組んでいる大企業は66.0%、中小企業は40.6%となっている(東京商工リサーチ調べ)。スマホ完結型サービスや店舗の全自動レジの例でも明らかなように、世の中は効率最優先のデジタル一辺倒に“進化”していく勢いだ。しかし一方で、接客サービス業の一角では、一味違った取り組みが模索され始めている。

■“中の人”が対応する書店員アバター

 有隣堂とKADOKAWAが展開する書店DXでは、「アバター書店員」が期間限定で試験導入された。ChatGPTを導入した「AI書店員 ダ・ヴィンチさん」もイマドキだが、「アバター書店員」の画面上のアバターは実際は有隣堂の書店員が別の場所から遠隔接客している。人間味と併せ、人出不足にも対応できる。

■デジタルで再現する回転寿司の楽しみ

 あきんどスシローは、デジタルサイネージを活用した注文システム「デジタル スシロー ビジョン(デジロー)」を一部店舗に導入した。コロナ禍や衛生問題で回転レーンの使用を中止していたが、その間、体験できないでいた「流れるネタを選ぶ楽しみ」をデジタル上で再現した。デジローの画面上に流れる寿司ネタは完全ランダムにして、リアルな回転レーンと同様な、商品との偶然の出合いを演出したという。デジタル一辺倒ではない、人のサービスとしての温かなアナログ感をハイブリッドするDXであってほしいものだ。

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編集工房《Office K》が提供する、Marketing/Mind/Movementのイマとコレカラを読み解くトレンド・クリップ。時代・社会、市場・商品、暮らしや生活意識の大小潮流をご紹介。