専門家のスキルやノウハウを手軽に手に入れ、ちゃっかり楽しもうという動きが拡大している。学識者の知見やプロ仕様の高機能を、一般生活者サイズにリバイスして提供する、いわば“知・技の再配分”ということ。
■先端の知を編集する「新書」
長引く出版不況の中で、ひとり気を吐いているのが「新書」だ。推定発行金額は2016年で約190億円をキープし、400万部超のメガヒットもある。「新書」を名前に含むレーベルは約80にのぼり、60年間休止状態だった「河出新書」も2018年末に再始動する。新書は、社会科学や自然科学についての現代的な話題を扱っており、学識者や専門家の知見をわかりやすくまとめてある。手ごろな価格とページ数で手に取りやすい上、出版社にとっても低コストで制作できるメリットがあるという。
■プロの高機能性をカジュアルに入手
専門レベルの価値をカジュアル化した例はファッション界にもある。作業服大手の「ワークマン」といえば、ガテン系を中心としたプロの職人向けの専門店。2018年9月にオープンさせたカジュアル衣料の新業態「ワークマンプラス」(立川、川崎など)が女性にも大人気に。炎天下や厳寒でも対応できる通気性や防寒、防水などプロ仕様の高機能性とカジュアルウエアとしての低価格が支持されている。また、高度テクノロジーのカジュアル化も進展。デジタルネイルプリンター「PriNail」は、 1,200dpiの高解像で爪に自動でグラデーションや精細なイラスト・写真などを印刷できる。専用のスマホアプリから300種以上のデザインや自分で撮影した画像を選択するだけ。このプリンターがあれば、ネイルサロンに行かなくても自宅で手軽にネイルが楽しめるというわけだ。
■知や技の“再配分”で豊かな社会へ
これら専門知や専門技能のカジュアル化は、お手軽・安直といった批判もあるが、専門家に独占されがちな知識や技能の“再配分“という側面も大きい。それらが共有されることで、社会一般の生活・文化レベルの向上に寄与できるし、ビジネス上の新たな発想や戦略を生み出す契機ともなりうるだろう
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